SBIソーシャルレンディングは危険?その財務状況は
日本のソーシャルレンディング会社の中でも、maneoについで2番目の規模を誇る会社がSBIソーシャルレンディングです。
2011年からソーシャルレンディング事業に進出し、これまでの累計金額は400億円以上。
会員数も3万人を突破するなど、名実ともにソーシャルレンディング業界の大手企業となっています。
そんなSBIソーシャルレンディングですが、財務の状況は決して良いものではなく、赤字が続いていると言われています。
では実際に同社の財務がどのような状況であるのか、決算報告などから確認してみましょう。
1.最新の決算情報では黒字である
SBIソーシャルレンディングの決算に関する最新の情報は以下のページに記載されています。
https://www.sbi-sociallending.jp/system/application/views/common/SL_BS_PL_11.pdf
こちらのページで確認できる2018年3月期のSBIソーシャルレンディングの決算は、売上高が約14億円。
そして当期純利益は1億4,200万円です。
これまで赤字が続いていると言われていたSBIソーシャルレンディングですが、2017年度の決算を見れば順調に利益を上げていると言えるでしょう。
SBIソーシャルレンディングでは、先日プレスリリースで貸付残高が200億円を突破したという内容の発信を行いました。
このように融資残高は順調な伸びを見せており、2017年度では1年間で貸付残高を100億円も増やしています。
投資家からの累計募集金額が400億円を突破したSBIソーシャルレンディングですが、言い換えれば2017年度だけで100億円以上の融資を行ったことになります。
SBIソーシャルレンディングの場合、100億円の融資を行えば10億円の売り上げにつながり、さらにそこから1億4,000万円の利益が生じていることが分かります。
2.累計赤字額は5億円以上
単年での黒字化に成功しているSBIソーシャルレンディングですが、貸借対照表を見ると累積赤字があることもわかります。
貸借対照表では利益剰余金として、5億1,000万円の赤字が記載されています。
SBIソーシャルレンディングは2011年から営業を開始していますが、2011年度から2016年度までに積み重ねた赤字が相当な額に及んだ結果、例え2017年度に1億4,000万円の黒字化に成功しても、残念ながらまだ財務状況は決して楽観視できる状況ではないようです。
ただし、2016年度の利益剰余金が6億5,000万円の赤字だったことを思い起こせば、現在の営業成績を維持できれば、3~4年程度で赤字を解消できることがわかります。ここ数年の利益剰余金の推移をみると以下のようになっています。
2016年3月期:6億6,304万円
2017年3月期:6億5,366万円
2018年3月期:5億1,078万円
2016年度決算の時点で、2015年度決算よりも利益剰余金のマイナス分を削減することに成功していますので、同社の経営状況が徐々に好転しつつあることがわかります。
SBIソーシャルレンディングの事業は、ようやく本当の意味で軌道に乗ってきたと言えるでしょう。
また年度ごとの貸付金額を見ると、2016年度は100億円の融資額で1,000万円の利益。
2017年度は200億円の融資額で1億4,000万円の利益となっています。
年間の融資額としては100億円がSBIソーシャルレンディングにとっての損益分岐点であり、さらに融資額を100億円増やすことで、約1億5,000万円の利益が出ると考えられます。
もし2018年度の貸付金額が単年で200億円であれば、その利益は3億円程度になるでしょう。
そのペースで貸付残高を増やすことができれば、2年間で赤字をほぼなくすことが可能です。
3.初の返済遅延が7月に発生
累積赤字はあるものの、事業はとても順調に推移しているように見えるSBIソーシャルレンディングです。
しかし、2018年7月には初の法人向け融資での支払い遅延が発生しました。
SBIソーシャルレンディングではこの原因を「融資先の企業が連絡を断ち、返済が行われなくなったため」としています。
融資先の名前はもちろん明らかにされていませんが、イニシャルなどから推測するに、これまでも何度か融資実績のある会社と推測されます。
つまり、信頼のおける相手に投資していたのに、その会社から返済が受けられない状況に陥ってしまったのです。
これまで個人向け融資、また海外留学生向けファンドなどでの遅延はありましたが、法人向けの案件での返済遅延は発生していませんでした。
それだけにSBIソーシャルレンディングの投資家の中には、この状況を不安に思う人間も多いようです。
しかしSBIソーシャルレンディングの対応は非常に迅速であり、担保として設定している不動産を即刻競売に掛け、出来る限り早く投資家に資金の返済を行おうとしています。
またこれまでの貸付金を全く回収できていないわけではなく、一部の貸付金はすでに返済されています。
競売で担保を売却すればかなりの額のお金になり、そこから返済が行われることが見込まれています。トラブル時の対応でも、SBIグループの一員ならではの信用の高さを見せていると言えます。
5.ソーシャルレンディング業界二番手の座から飛躍のチャンス
ソーシャルレンディング業界は2018年のラッキーバンクの行政処分、そして2018年6月のグリーンインフラレンディングの案件募集停止、さらに最大手maneoへの行政指導など、様々なトラブルが相次いでいます。
ここに来てSBIグループの一員として信頼されていたSBIソーシャルレンディングでも返済遅延が発生したことで、ソーシャルレンディングという投資手法自体の安全性を危惧する人も出てきているようです。
しかしビジネスでもピンチを切り抜ければ、後にはチャンスが訪れます。
グリーンインフラレンディングの案件募集停止、返済停止などの報道が飛び交う中で、その管理を行っていたmaneoは現在、有効な対策を打てていない状況です。
しかし、今回のSBIソーシャルレンディングは迅速に担保を売却し、即刻返済に充てるという非常に素早い対応を行っています。
ソーシャルレンディング業界のこれまでを見ると、どの会社でも全く返済遅延や貸し倒れが起きていないことから、ある意味で異常な状況だったと思います。
投資である以上、損失が発生するのは避けられないことですが、それに反してソーシャルレンディング各社は無理のあるいびつな業務を行い、貸し倒れを発生させないようにしていたのです。
そのほころびがついに表面化する中、もし返済遅延が起きた時でもSBIソーシャルレンディングが迅速、かつ適切な対応で投資家に大半の資金を返済できれば、今後の同社は「貸し倒れが発生しても、投資金だけは回収できる」などと前向きに評価されるでしょう。
maneoに対する不信感を持つ投資家が増えている中、SBIソーシャルレンディングの対応次第ではより信頼できる投資先として、さらに投資家が多く集まることも予測されます。
現在でもSBIソーシャルレンディング案件は、募集が開始されるとわずか数分で何億円ものお金が集まるほどの人気ぶりを見せています。
そして今回の返済遅延を受け、SBIソーシャルレンディングでも融資先の審査に対し、今後はより慎重になっていくでしょう。
SBIソーシャルレンディングは累計の数字では赤字ですが、経営状況も安定しつつあり、赤字解消もそう遠くない未来に実現できる状況です。
そして投資先としてのリスクが低い会社として、より人気を集めていくのではないでしょうか。